【最終回】秋のケベック州(カナダ)⑥:モントリオール市街と近郊でケベック最後の3日間を過ごす/Spend the last three days of Quebec in Montreal area
モントリオール市内を観光、地下鉄の治安がいいことに驚き
モントリオール滞在2日目は小雨の中で旧市街、新市街を散策することに。我が家には珍しく、市内だけに交通手段は地下鉄、こういう時は駅から5分の宿は重宝する。チケットカウンターで1日券を$CA11(約1,100円)で購入、これで市内の地下鉄は1日乗り放題。カナダの地下鉄は初めて乗ったが、治安がかなり良いと感じた。パリの地下鉄では強奪されるから絶対に人前でスマホを触っちゃいけない、と聞かされていたが、ここでは乗客のほぼ全員がスマホをいじくっている。まるで日本の情景そのもの。
カナダの地下鉄は札幌のように線路ではなくゴムタイヤで走っており、750Vの電圧を動力にしているらしい。
外は小雨が止まず、まずはダラーショップ(カナダの100円ショップ)で折り畳み傘を購入、$6程度だったが十分に用をなす。ダラーショップは物価の高い北米で確かに便利だけど、店内に入った時のキラキラ感は断然日本の100円ショップに軍配が挙がるな。
最初に向かったのはモントリオール市中央に広がる新市街。まずは聖ジョセフ大聖堂へ。マウントロイヤルと呼ばれる小高い丘の上に鎮座するこの大聖堂からは、平地に広がるモントリオール市街を一望にすることができる。ちなみにモントリオールの条例では、このマウントロイヤルの標高を超える建築物は許されていないが、その頂に立つこの高さ30m以上のカソリック聖堂はこの条例に違反する市内で唯一の建造物となっている。下層階は背後の岩山をそのまま構造体に取り込む形になっており、岩山に沿って幻想的な回廊を形作っている。
聖ジョセフ大統領からさらに地下鉄に乗って中心街のユニクロへ。
スラックスが$59.9(約6,000円)、ダウンコートが$199.9(約2万円)と日本よりは高めだけど、カナダの物価に比べるとかなり買いやすい価格帯じゃないだろうか。店内のディスプレイは京都や富士山、山の四季など、日本の美しさを伝える動画や画像が流している。こうしたところで「Cool Japan!」のブランド価値を付与しようとしているのだろうか。
これはユニクロの隣りのビルのマスコット?こんな感じで街中は様々なアートのインスタレーションに溢れている。
ところでモントリオールの街中、そして地下鉄の駅やガソリンスタンドでやたらに見かけたのが、下の写真のフクロウ(?)のロゴマーク。これこそ日本のセブン&アイHoldingsの買収を2024年に表明したアリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard)のシンボル。カナダ最大のコンビニエンスストアであり、現地では通り沿いのコンビニエンスストアのほか、駅のキヨスク、ガソリンスタンドに付随したショップなどそこら中で見かける。企業規模としてはセブンイレブンに迫るものがあるようだが、セブンイレブンが40年にわたって進化させてきた世界でも例を見ない商品戦略やロジスティクスをこの会社が受け継げるようには見えなかった。
昼ご飯はPlace d’armes駅から歩いてすぐの中華街へ、フランス語ではカルティエ・シノワ。3~4ブロックの区域内に広がる思った以上に小さなところだった。
そして宿の近くのジャン・タロン・マーケットに帰りぎわに寄り、夕飯と翌日の朝食を買って帰る。やはりこの地域のパン、特にバゲットとクロワッサンは絶品!
旧市街の散策、目的の一つ「ビーバーテール」を発見!
翌朝は朝から雨がひどかったため、車を使って旧市街を中心に散策。今日は旧市街が中心。まずはノートルダム大聖堂、1672年に設立されたカトリック教会で北米では最大級の教会、特に19世紀初頭から始まったゴシック・リバイバルスタイルの増築によってほぼ現在の姿が出来上がった。訪問当日は外壁の工事中であいにくの姿だったが、青くライトアップされた会堂内部は変わらず美しい。
ノートルダム大聖堂からはモントリオールの旧市街が広がっている。欧州の街並みを思わせるもので、ハリウッド映画でも予算の厳しい作品はここで欧州のシーンを撮影するらしい。
ここで見つけたのが「ビーバーテイル」の専門店。「ビーバーの尻尾」というネーミングから思いつくように、これはカナダの名物スナック。実はカナダに入国してからずっとこれを探していたのに、どこでも見つけることができなかった。それをこの旧市街で見つけたわけだ。日本でいうところの揚げパンに砂糖とシナモンを振った形のスナック、もともとはオタワ発祥だったけど冬の熱いココアの友としてカナダ全土に広がったらしい。オバマ大統領のお気に入りとしても有名。日本では2015年に東京自由が丘に支店ができたらしいが、現在では閉店している。実際に味わってみると、やたらに甘いばかりの北米のドーナツなどに比べて、甘さ控えめで様々なトッピングの味を受け止めるしっかりした旨みを感じた。
旧市街の端、セントローレンス川に面するのはノートルダム・ド・ボンスクール教会。1655年に建てられた北米最古の教会のひとつ。川を往来する船乗りたちの目印となっていた教会で、堂内には船乗りたちが航海の安全を祈願した船の模型が吊り下げられている。
旧市街にはジャック・カルティエ広場から四方に街路が広がっている。その街並みを歩いていて、目に留まったのが下のブラッセリー「3BRASSEURS」、後でガイドブックにも掲載されていることに気づいたが、ここで食した「マグロのタルタル」が大当たり!以前の記事(リンク)にも書いたが、マグロのヅケ(英語ではポキか?)に酸味の強いリンゴのざく切りを混ぜたのが日本人のシェフにはなかなかできない発想だ。やはりフランス語圏の食事は侮れない。
郊外のモン・ロイヤル公園で見つけたカナダ国旗
新市街の丘の上に広がるモン・ロイヤル公園、この公園で思わぬカナダ国旗を見つけました。
ちなみに下は市内の学生街カルティエ・ラタンで出会った猫。日本のキャットフード「シーバSheba」をあげたら大喜び。
郊外へのドライブからアメリカ国境まで
実質10日間の旅行日程もほぼ終わり。帰国前日のこの日はモントリオール郊外でも、アメリカ国境までドライブすることにした。アメリカ、バーモント州との国境を目指して、Val Caudaliesという町でカナダでは評判の白ワインを買う。これはその日の夕飯で飲んだが、とてもすっきりとした酸味の少なく爽やかなワイン。とてもお土産に持って帰る余裕もなく、あっという間に飲み干してしまった。
その近くのフレリトビュール(Frelighsburg)というガイドブックにも載っていない小さな町で昼食。小さなツーリストインフォメーションのお姉さんに教えてもらった小川沿いのレストランへ。川沿いのテラス席は風が通って気持ちがいい。ここでとにかく驚いたのは野菜が美味しいこと!お店の人に聞いたら、すぐ裏の畑で育てているらしく、新鮮でしっかり味のついた野菜は口にしただけで幸せな気分になる。旅先でふと出会うこうした予期せぬ喜びが、やはり旅の醍醐味なんだとあらためて感じる。
そして国境まで来たのがこの写真。事前の情報では国境の手前に土産物屋があるはずだったけど、いつの間にか無くなっていた。ちょっとだけアメリカ側にも行ってみたかったけど、レンタカーの保険のカバー区域外になるため、今回は国境と税関を確認するだけにしておく。
いよいよ帰国、でも再訪問も近そうだ
10日に渡ったケベック州の旅も終わり、帰国の日に。
カナダでは初めてのフランス語圏のケベック州で訪問前には、言葉は通じるのか、以前にフランス本土で味わったような疎外感を感じないか、など様々な不安があったものの、ほぼ100%英語が通じるし、話をした方々もフランス本土よりもずっと異人種に寛容で、嫌な気分になったこともほとんどなかった。事前に考えていたよりも全然居心地のいいところで、いい意味で期待が裏切られた格好だ。おそらく近い将来に再び訪れることになりそうだ。
カナダ最後の食事もなかなかのもの。いつかまた来る日までしばしのお別れ。