「円安」の後に来るもの:日本の近代史上初めての“個”が活躍する時代が到来か/What’s Coming After the Yen’s Depreciation: Is the Era of ‘Individualism’ Arriving in Japan’s Modern History for the First Time?
・日本円の独歩安が止まらない。対ドルに対してだけでなく、世界中の通貨の中で日本円だけが一人負けのような状況だ。為替レートは短期的には内外金利差によって決定されるが、現状の円安トレンドはまるで日本の国力そのものの弱体化を表しているように見える。
・The continuous decline of the Japanese yen shows no signs of stopping. It’s not just against the dollar; the yen seems to be weakening alone compared to other currencies around the world. While exchange rates are determined by the interest rate differential between countries in the short term, the current trend of yen depreciation appears to reflect a weakening of Japan’s national strength itself.
(English text continues to the latter half of the page)
・各国のステレオタイプの国民性を笑い話にした「タイタニック・ジョーク」がある。その中でも日本人は自分一人では動けず、周囲を見ながら動くという特性に描かれた。日本社会の歴史は、親に従い、上役に従い、長いものには巻かれるのが美徳と教えられて、そのようにして形成された従順に動く社員を抱えた組織が高度成長期の時代には世界の中でも強みを発揮してきた。
・だが、そのようにして“集団・企業としての強さ”を武器に競争力を伸ばせた時代はとっくに終わった。社会の老齢化は歴史的なペースで進み、将来への設備投資を行ったまま、ITやAIなどの技術革新の波の中ではゲームのメンバーに加わることもできない。この凋落は決して一時的なものではなく、“成長の種”である設備投資を怠ったことから今後も10年単位で低迷が続いておかしくない。こうした中で日本の現役世代、特にこれから就労する若年世代はどのように行動すべきだろうか。
・ふと頭に浮かんだのが、新型コロナのパンデミック直前に訪問した米コロラド州のメサ・ヴェルデ、別名クリフ・パレス(過去記事リンク)だ。アナサジとも呼ばれたホピ系のネーティブアメリカンが12~14世紀にかけて築いた断崖絶壁に穿たれた都市のような岩窟住居。しかしこのユニークな文明都市はわずか150年ほどで打ち捨てられ、住民は各地に散らばっていった。その600年後にフランス人フロンティアが発見するまで、この遺跡は人跡未踏のまま荒野の中にたたずんでいた。人々が離散した真の原因はいまだに不明で多くの議論を呼んでいるが、世界的にもきわめてユニークで高度な遺跡を残して人知れず消えていった文明は、世界をけん引する技術を発達させながら、やがて「ガラパゴス」と呼ばれる先詰まりの進化に陥ったまま競争力を失っていく現在の日本の姿を連想させるものがある。
・「アジアの大国」から凋落しつつある日本からは、ディアスポラのように若年層が出ていく現象が強まるかもしれない。歴史を通して日本の教育は年長者から教わり、優秀な大学、大きな会社に入ることを目的としてきた。これは自国の教育、企業といった“集団”が将来にわたって頼るに足る存在であることが前提のシステムだ。この前提が崩れてしまおうとする状況の中で、近い将来には近代日本では初めて、「集団として見られる日本」でなく「個の生き方が問われる日本」の時代が訪れるかも知れない。
日本円の下落が止まらない
外国為替市場における日本円の下落が止まらない。2021年まで100円台を行き来していた$/円為替レートはすでに2024年7月初頭までに162円間近まで減価が進んでいる。3年足らずで5割近い下落だ。もちろん短期的な為替レートは内外金利差によって決定されるので、この円安は「金利上昇期に入ったアメリカ」と「金利を上げたくても上げられない日本」の間で繰り広げられる通貨ゲームのように表現する向きもある。ところが現状の「円安」は決して対ドルだけのことではなく、ユーロや英ポンドなどほぼすべての主要通貨に対しても日本円は相対価値を急激に落としている。国際決済銀行(BIS)がつい先日発表した2024年5月末における日本円の実質為替レートは2020年を100とした場合、68.65と過去最低を更新している。またスイスのビジネススクール国際経営啓発研究所(IMD)が毎年発表する国際競争力ランキングの2024年版で、日本は38位に後退している。かつて89年から4年連続で世界1位だった日本のランキングはその後30年でここまで低下している。現在進行形で進んでいる円安は単純な内外金利差によるものというよりも、日本の国力そのものの衰えを示しているものと感じざるを得ない。
IMDによる日本の競争力ランキング推移
(出所)IMD「世界競争力年鑑」より作成
タイタニックジョーク:“組織”として生きる日本人
各国国民のステレオタイプのイメージを揶揄したタイタニックジョークと呼ばれるものがある。場所や時代によって様々なバージョンがあるようだが、概ね以下のようなものだ。
【世界最大の客船タイタニック号が氷山に衝突し、まさに沈まんとしている。ところが救命ボートは乗客の半数しか用意されておらず、できるだけ多くの乗客に海に飛び込んでほしい。どうやって乗客に海に飛び込ませるか?賢い船員が思いついた。彼はまずアメリカ人のグループに近づき、「今飛び込めばあなたはヒーローになれますよ」と呟くと、アメリカ人たちはターザンのように奇声を挙げて我先に海に飛び込んだ。次にイタリア人グループに近づき、「あのセクシーな女性は最初に飛び込んだ人と一夜を共にしたいと言っておられます」と呟くと、男どもは全員飛び込んだ。そしてドイツ人のグループには「飛び込むことが規則です!」、そしてフランス人のグループには「絶対飛び込まないでください」と言って両国の人間はそれぞれ残らず海に飛び込んだ。
そして最後に日本人のグループに近づきそっと囁く、「あのう、何だか皆さんそうなさるみたいですよ」、居合わせた日本人は黙って互いの顔を見合わせ、そっと同時に海に飛び込んだ。】
最後の一文がまさに日本のビジネスマンの行動原理と日本独自の同調圧力を表している。「出過ぎた杭は打たれる」という諺が示す通り、日本ではどんなに優秀な個人でもヒーローにはならず組織の中に埋もれるように働き、“組織としての強さ”を国全体の成長に換えてきた。こうしたスタイルの成長が持続する条件は、成長の主役が大規模な資本集約型の産業で、その構成単位である行政や会社組織のメンバーが“平均して”高い能力を持つことだ。戦後の日本ではベビーブームで人口が急激に増加する中で同世代間の競争も激化し、そうした競争を勝ち抜いた者が企業や官公庁で主導的立場につき、さらに“平均して優秀”な集団が技術や製品開発を担い、日本は製造業を中心に戦後の高度成長を続けた。
だがこうした成長の構図は安定した継続成長と人口増加を前提にしたもので、バブル崩壊以降その前提は大きく狂った。安定成長を存続基盤とした金融の護送船団方式は97年以降次々と破綻し、これまで増加を続けた人口増加は止まり人口減少期に入る。少しでも成長投資のための流動性を高めるために政府と日銀は歴史上初めてとなる超低金利政策を数十年に渡って続けるが、マイナス成長の中で大企業は稼いだ利益を将来の成長投資には回さずいざと言う時のための内部留保に回し、どれだけ金利がゼロに等しくとも設備投資に回ることは少なかった。これはプライベートセクターでも同様で、人々は政治と将来への不安から所得を消費に回すよりも貯蓄に充て、完全雇用に近い状態の中でも個人消費が盛り上がらない。経済原論の講義で真っ先に習う「三面等価の原則」は「生産(付加価値)、分配(所得)、支出(需要)」の3つの側面でみた金額が(事後的に)等しくなるという原則だが、現在の日本では、将来に不安を抱えて個人消費が冷え込み、それによって有効需要が盛り上がらず、生産も停滞して分配が減少(低賃金)してさらに消費が冷え込む、という負のスパイラル、さらに近年はここに資源高、原料価格高騰、円安がコストプッシュインフレを引き起こし状況をさらに悪化させている。集団として皆が似た行動をとることによって状況を結果として悪化させる『合成の誤謬』に陥っている。組織・集団として国家の成長を実現してきた日本は、ここに来てギアが逆に入っていると言えないだろうか。
最近になって株式市場では日経平均がバブル時の最高値(89年末)を上回ったと誉めそやす向きもあるが、同じ期間にNY市場は14倍以上の値上がりになっている。これはもはや“出遅れ”というものではなく、かつての先進国が途上国レベルへ凋落する歴史的な転換点という表現が正しいのではないか。株式投資を行う人によっては「ここまで日本経済だけが落ち込んだのだから、今後は“出遅れ”銘柄としてリバウンドが期待できるのではないか」と考える向きもあるかもしれない。しかしそれはあまりに希望的観測だ。成長とは“過去の投資の果実”そのもの、過去30年にわたって成長のための設備投資のリスクを怠り、内部留保や役員報酬の増額に充ててきた日本企業がここからまた成長を始めるという見通しには無理がある。
次世代の若者がとるべき行動:ロールモデルの崩壊
かつて日本が国としての成長を謳歌してきた時に作られた若者のロールモデルは非常に単純なものだった。すなわち
「学校でよく勉強して優秀な成績を納め、いい大学に入って、卒業後は大きな企業に入れば安定した人生が送れる」
というものだ。しかしこれは日本の企業や国家の成長が継続するのが前提で、日本全体の成長が止まってしまってはロールモデルの有効性は失われたといっていい。受験戦争の覇者となって東大に入学しても世界大学ランキングでは29位、国内の大企業に入っても収入は多くの先進国の半分にも満たなかったりする。グローバルな情報が溢れる現代において、国内で努力することが成果に結びつかない情況が続けば、日本の若者も旧来のロールモデルにしがみつくことはなくなるだろう。
高度成長期からの受験戦争の影響で、日本の大学入学時の学力は世界で一番優秀と言われてきたが、近年ではゆとり教育の悪影響に加えて、戦後のロールモデルへの疑問から従来のように必死に勉強に取り組む高校生も減少していく。“日本凋落”の次のサインとなるのは、18歳時の学生の知力だと感じている。
アメリカの秘境の地からふと浮かんだ妄想:ディアスポラの始まり?
ディアスポラ:民族離散、代表的なものは約2,000年前のユダヤ戦争後に安住の地を失くし、欧州、アジアに散っていったユダヤ民族
突飛な発想かも知れないが、日本の現状から突然アメリカのある秘境の遺跡を連想してしまった。
アメリカはコロラド州西部に位置するメサ・ヴェルデ、別名クリフパレスと呼ばれるアメリカ先住民の「岩窟住居」だ。新型コロナ禍直前の2019年に自分も訪れた場所。実に現実のものとは信じられない奇観だが、これは巨大なテーブルマウンテンの中腹の窪みを利用して日干し煉瓦を積み上げて築き上げたれっきとした“都市”構造だ。
この地域には古代の河の流れにより多くのテーブルマウンテンのような岩山が立ち並び、この岩山頂上の高原地帯に先住アメリカ人のアナサジが紀元前1世紀頃に居住を始めた。その後いったいどんなイノベーションがあったのかは知る由もないが、12世紀末頃から岸壁の自然の窪みを堀り広げてこの岩窟住居の建設が始まる。大きなものでは現在の鉄筋の建物5階の高さに相当するほどの都市構造になった。岩窟に穿たれた空間では、夏は涼しく冬は暖かく、水は崖の途中から湧き出しており生活するには快適な場所であったらしい。住民たちはここから岩の間を縫う秘密の通路を昇って岩山の上の豊潤な大地で農耕や狩猟を行って暮らしてきた。他の部族に攻撃されることもなく、岩窟住居に住む(恐らくは百人単位の)住民にとっては、まさに岩山と言う一つの世界を独占した暮らしだったのではないか。
ところがこの高度に進化した街と住居が完成する14世紀頃にこの住居は打ち捨てられて、19世紀末にフランス人のフロンティアに発見されるまで600年近く人跡未踏の廃墟となった。なぜここまで高度に発達したユニークな文明が突然崩壊することになったのか、考古学者も様々な解釈を試みている。凶作、狩猟動物の減少、あるいは疫病の流行など、決定的な説はいまだに定まらない。ただ自分がこの場に立った瞬間に感じたのは、「人口動態の変化と、次世代の行動」というもの。一つの岩窟住居にはおそらく100人単位の住民がいたと考えられるが、一つの岩山から隣りの岩山まで歩けば数日はかかり、各グループはそれぞれ隔絶された世界に住んでおり、グループの構成メンバーもほとんど動きはなかっただろう。世代交代を繰り返すたびに血が濃くなり、集団としての“世代生産力”が弱まり老人の割合ばかりが増えて集団のエネルギーも衰え、将来に向けたエネルギーを持ちながら“滅亡”を予感した若者たちは徐々に外の世界に向けて離脱していったディアスポラのうねりがあったのではないか。いわば「閉鎖系文明の勃興と衰退」の構図だ。
現代日本との共通点:独自の文明構築とガラパゴス化による行き詰まり
もちろんこんな説にどれほどの信憑性があるのかはわからないし、自分の想像の産物に過ぎない。しかし自分がこんな想像をしたのは、どうしてもこの文明の盛衰と現代日本との共通点が頭に浮かんでしまったからに他ならない。北米大陸の片隅で世界でも類を見ないような独自で高度な文明を築き上げながら、住民たちに捨てられて廃墟と化したクリフパレスの地に佇んでいるうちに、ふと日本の現状と将来への空想が重なって見えた。明治維新から必死に欧米に追い付こうとしたアジアの小国が、太平洋戦争という破滅を挟みながらも経済では有色人種としては初めてと言えるレベルに昇りつめ、技術開発でも経済成長でも世界的にきわめてユニークなポジションを構築しながらガラパゴス的進化の罠に落ち込み、さらにバブルという狂乱のピークに達した後は、人口増加も経済成長も失くしてこれまで獲得したポジションから続々と脱落していく日本の姿だ。日本と言うある意味で閉鎖的でオリジナルな経済社会の勃興と衰退、特に明治維新(1868年)から現在(2024年)までが156年で、まさにクリフハウスの文明が始まり人々に打ち捨てられるまでの期間と奇妙に一致する。この極東の一角で起こっていることは、ひょっとしたら20年後の歴史の教科書に「世界有数の経済大国が、途上国未満に凋落する過程」として書き加えられるものなのかもしれない。ちなみに近代史において、先進国から途上国未満に衰退した例はアルゼンチンしかない。同国は19世紀末から農業資源をバネにして世界有数の富裕国のポジションを確立したが、第一次世界大戦以降は農業から工業への転換に失敗して凋落、現在でも高インフレにあえいでいる。
過度に悲観的になることは禁物だが、日本で安定した成長が期待できるフェーズは歴史的に終了したと言えるのではないか。このように先の見えない状況の中で、次世代の若者たちはどのように行動すべきだろうか。もちろん大多数は従来通りのロールモデルに従う道を選ぶだろう。ただ日本で成功してもグローバルに劣位にあることが見えてくると、若年層のモチベーションも次第に下降気味となり、現役世代の平均的能力も尻すぼみとなり、それがまた国の凋落に拍車をかけるかもしれない。
しかしその一方で、最初から日本国内の教育から就職という1本のレールを外れて、海外を中心にキャリアパスを築こうとする人間は着実に増えている。ワーキングホリデーのように安易な手段ではなく、学生の時点から海外に留学し、日本以外の視点から自分の人生のキャリアパスを考える勢力だ。もちろん学生時代からの留学には経済的障壁も大きいが、それ以上の成果が期待できるようになればこうした動きはさらに加速する。スポーツの世界ではメジャーリーグの大谷翔平や、NBAの八村塁など、これまでは考えられなかったような本場で大活躍する選手が出ている。これからはアカデミーの世界でも、実業の世界でも日本から飛び出した人材が世界的な活躍を強めるのではないだろうか。ここで評価されるのは、国としての、あるいは会社という組織の一員でなく、あくまで一人の日本人としての“個人”である。こうした若者たちによるディアスポラの動きが強まれば、日本の国としての成長は衰えても、“優秀な日本人”としての評価も生まれるのではないか。ある一定割合の若者たちが日本を出ていく動きは止められないと感じる。しかしそれは近代史上で初めて、日本人が集団や組織としてではなく、“個”として評価されるムーブメントの始まりになるのではないか、とも感じている。歴史の流れとして、このムーブメントは決して忌避すべきものではないと信じている。
・The continuous decline of the Japanese yen shows no signs of stopping. It’s not just against the dollar; the yen seems to be weakening alone compared to other currencies around the world. While exchange rates are determined by the interest rate differential between countries in the short term, the current trend of yen depreciation appears to reflect a weakening of Japan’s national strength itself.
・There is a “Titanic joke” that makes fun of national stereotypes. In it, Japanese people are depicted as unable to move independently, always looking around to follow others. The history of Japanese society teaches that it is virtuous to obey one’s parents, superiors, and follow the majority, which created an organization of obedient employees. This strength was a major advantage during Japan’s period of rapid economic growth.
・However, the era when Japan could leverage its “collective and corporate strength” to enhance its competitiveness is long gone. The aging of society is progressing at a historic pace, and despite continued capital investment for the future, Japan is unable to participate in the game amid waves of technological innovations like IT and AI. This decline is not temporary; having neglected “seeds of growth” such as capital investment, Japan may continue to stagnate for decades. In this context, how should the current working generation, particularly the younger generation about to enter the workforce, act?
・A thought that came to mind was Mesa Verde in Colorado, also known as Cliff Palace, which I visited just before the COVID-19 pandemic. The Anasazi, or Hopi Native Americans, built this cliff dwelling city between the 12th and 14th centuries. However, this unique civilization was abandoned after only about 150 years, and the inhabitants dispersed. For 600 years until discovered by French frontiersmen, the site remained untouched. (Past article link)The true cause of their dispersal is still unknown and widely debated, but this sophisticated and unique civilization, which quietly disappeared, evokes the image of modern Japan. Despite developing world-leading technology, Japan is falling into a “Galapagos” scenario, losing competitiveness through insular evolution.
・As Japan continues to decline from its status as a major Asian power, the phenomenon of the younger generation leaving the country, like a diaspora, may intensify. Historically, Japanese education has aimed at learning from elders, attending prestigious universities, and joining large companies. This system is based on the premise that Japan’s education and corporate structures are reliable long-term. As this premise crumbles, Japan may soon face an era where, for the first time in modern history, individuals will be evaluated on their personal paths rather than being seen as part of the collective.
The Continuous Decline of the Japanese Yen
The decline of the Japanese yen in the foreign exchange market shows no signs of stopping. The USD/JPY exchange rate, which hovered around 100 yen until 2021, has already depreciated to nearly 162 yen by early July 2024. This is a drop of almost 50% in less than three years. While short-term exchange rates are determined by interest rate differentials between countries, some describe this yen depreciation as a currency game between “the U.S., which has entered a period of rising interest rates,” and “Japan, which cannot raise interest rates even if it wants to.” However, the current yen depreciation is not limited to the dollar. The yen has also sharply declined in relative value against almost all major currencies, including the euro and the British pound.
The Bank for International Settlements (BIS) recently announced that Japan’s real effective exchange rate at the end of May 2024 was 68.65, setting a new record low when using 2020 as a base of 100. Additionally, Japan fell to 38th place in the 2024 edition of the International Competitiveness Ranking published annually by the International Institute for Management Development (IMD) in Switzerland. Japan, which was ranked first in the world for four consecutive years from 1989, has seen its ranking decline over the past 30 years. The current yen depreciation seems to indicate not just a simple interest rate differential but a weakening of Japan’s national strength itself.
IMD Competitiveness Ranking Trend for Japan
Source: Compiled from IMD “World Competitiveness Yearbook”
Titanic Joke:Japanese who live as a member of “Organization”
There is a so-called “Titanic joke” that mocks the stereotypical images of different nationalities. Various versions exist depending on the place and time, but it generally goes something like this:
<The Titanic, the largest passenger ship in the world, hits an iceberg and is about to sink. However, there are only enough lifeboats for half of the passengers, so they need as many people as possible to jump into the sea. How do they encourage the passengers to jump? A clever crew member comes up with an idea. He approaches the group of Americans first and whispers, “If you jump now, you’ll be a hero.” The Americans let out Tarzan-like cries and jump into the sea. Next, he approaches the Italians and whispers, “That sexy lady over there says she’ll spend the night with the first man to jump in.” All the men immediately leap into the sea. To the Germans, he says, “It’s the rule to jump in,” and to the French, he says, “Whatever you do, don’t jump in.” The people of both countries jump into the sea accordingly.
Finally, he approaches the Japanese group and softly whispers, “Everyone else seems to be doing it.” The Japanese passengers look at each other in silence and then quietly jump into the sea together.>
The last sentence precisely illustrates the behavioral principles of Japanese businessmen and Japan’s unique social pressure to conform. As the proverb “the nail that sticks out gets hammered down” suggests, in Japan, no matter how exceptional an individual may be, they do not stand out as heroes but rather work in a way that blends into the organization. This collective strength has driven the nation’s overall growth. The conditions for sustaining this style of growth include having capital-intensive industries as the main drivers and having administrative and corporate members who are “on average” highly capable. Post-war Japan saw a population boom, which intensified competition among the same age group. Those who survived this fierce competition took leading positions in companies and government offices, forming an “on average excellent” group that handled technological and product development, driving Japan’s high economic growth centered on manufacturing.
However, this growth model was based on the premise of stable continuous growth and population increase, which has significantly deviated since the bubble burst. The convoy system of financial institutions, based on stable growth, collapsed one after another from 1997 onwards. The previously continuous population growth stopped, and the nation entered a period of population decline. In an unprecedented move, the government and the Bank of Japan have maintained an ultra-low interest rate policy for decades to increase liquidity for growth investment. Yet, amid negative growth, large corporations did not reinvest their profits into future growth but instead hoarded them for a rainy day. Despite near-zero interest rates, little of the capital was directed toward capital investment. The same applies to the private sector, where people, anxious about politics and the future, preferred saving over spending their income, leading to stagnant personal consumption even in a state of near full employment.
The economic principle of the “three-sided equivalence” — where production (value added), distribution (income), and expenditure (demand) are (retrospectively) equal in amount — is taught early in economics classes. However, in today’s Japan, individuals’ anxieties about the future are cooling personal consumption, leading to insufficient effective demand, stagnant production, reduced distribution (low wages), and further cooled consumption, creating a negative spiral. Recently, this has been exacerbated by rising resource and raw material prices, along with yen depreciation, causing cost-push inflation and worsening the situation. By collectively taking similar actions, the situation is deteriorating due to the “fallacy of composition.” Japan, which realized national growth as an organization and group, seems to have its gears in reverse.
Actions the Next Generation Should Take: The Collapse of Role Models
The role model for young people created during Japan’s period of national growth was very simple. It was:
“If you study hard in school, get good grades, enter a good university, and then join a large company after graduation, you can lead a stable life.”
However, this premise relied on the continued growth of Japanese companies and the nation itself. Now that Japan’s overall growth has stalled, the effectiveness of this role model has diminished. Even if you emerge victorious from the entrance exam wars and get into the University of Tokyo, it ranks only 29th in the world university rankings. Even joining a major domestic company, your income might be less than half of that in many other developed countries. In today’s world, overflowing with global information, if the effort put in domestically does not lead to corresponding results, young Japanese will likely abandon the old role model.
Due to the impact of the entrance exam wars from the high-growth period, Japanese students entering university have long been regarded as having the highest academic ability in the world. However, in recent years, the adverse effects of the relaxed education policies, coupled with growing doubts about the post-war role model, have led to fewer high school students striving diligently in their studies as they used to. I believe the next sign of “Japan’s decline” will be the intellectual ability of 18-year-old students.
A Sudden Imagination from the Remote Wilderness of America: The Beginning of a Diaspora?
Diaspora: The dispersion of a people, typically exemplified by the Jewish diaspora after the Jewish-Roman wars about 2,000 years ago, which saw the Jewish people lose their homeland and scatter across Europe and Asia.
It may seem like a wild idea, but the current situation in Japan suddenly made me think of a certain ancient ruin in a remote part of America.
Mesa Verde in western Colorado, also known as Cliff Palace, is an “alcove dwelling” built by Native Americans. I visited this place just before the COVID-19 pandemic in 2019. It is a sight so astonishing that it feels almost unreal. It is a bona fide “urban” structure, built by stacking adobe bricks within a natural alcove on the mid-slope of a massive mesa.
This region features numerous mesa-like mountains created by ancient river flows, and the Ancestral Puebloans, or Anasazi, began settling on the high plateaus atop these mesas around the first century BCE. We don’t know what innovations occurred, but starting in the late 12th century, they began expanding natural alcoves into these cliff dwellings. Some of these structures reached the equivalent height of a five-story modern building. The alcoves provided a cool refuge in summer, warmth in winter, and water from springs on the cliffs, making it a comfortable living environment. The residents would climb secret passages between the rocks to farm and hunt on the fertile land atop the mesas. They faced no attacks from other tribes, living in what was likely a self-contained world within the cliffs.
However, by the 14th century, when this advanced city and its dwellings were completed, they were abandoned and remained unvisited for nearly 600 years until discovered by a French frontiersman in the late 19th century. Archaeologists have proposed various theories about why this highly developed and unique civilization suddenly collapsed, including poor harvests, a decline in game animals, or outbreaks of disease, but no definitive explanation has been found. When I stood in that place, what I felt was a sense of “demographic change and the actions of the next generation.” It’s believed that hundreds of people lived in a single alcove dwelling, but it would have taken days to walk from one mesa to the next, isolating each group in their own world, with little movement among the group members. Over generations, inbreeding likely weakened their collective generational productivity, increased the proportion of the elderly, sapped the group’s energy, and prompted young people, who still had a sense of vitality but foresaw their “doom,” to gradually leave for the outside world, initiating a diaspora. This represents the pattern of “the rise and fall of a closed-system civilization.
Parallels with Modern Japan: The Creation of a Unique Civilization and Stagnation Due to Galapagos Syndrome
Of course, I don’t know how much credibility such a theory holds, and it is nothing more than a product of my imagination. However, the reason I imagined this is because the parallels between the rise and fall of this civilization and modern Japan kept coming to mind. While standing in Cliff Palace, a place abandoned by its residents and turned into ruins despite having developed a unique and advanced civilization in the corner of the North American continent, I couldn’t help but see the current state and future of Japan in my mind’s eye. From the Meiji Restoration, where a small Asian country desperately tried to catch up with the West, to rising to an unprecedented level for people of color in the economic field despite the catastrophe of World War II, Japan developed a globally unique position in technological development and economic growth, only to fall into the trap of Galapagos-like evolution. After reaching the peak of the bubble economy’s frenzy, Japan lost both population growth and economic growth, gradually falling from its once-achieved position. The rise and fall of Japan’s somewhat closed and original economic society, particularly the period from the Meiji Restoration (1868) to the present (2024), spans 156 years, coincidentally matching the period from the beginning of Cliff Palace’s civilization to its abandonment. What is happening in this corner of the Far East might, in 20 years, be added to history textbooks as “the process of one of the world’s leading economic powers declining to below that of a developing country.” Incidentally, in modern history, Argentina is the only example of a country that has declined from being a developed country to below a developing country. Argentina, leveraging its agricultural resources, established itself as one of the world’s wealthiest nations in the late 19th century, but after World War I, it failed to transition from agriculture to industry and declined, currently suffering from high inflation.
It is important not to become overly pessimistic, but one could argue that the phase of stable growth in Japan has historically ended. In such an uncertain situation, how should the next generation of young people act? Most will likely choose to follow the traditional role models as before. However, as it becomes apparent that success in Japan still leaves one at a disadvantage globally, the motivation of the younger generation may gradually decline, leading to a decrease in the average capabilities of the active generation, which could further accelerate the country’s decline.
On the other hand, there is a steadily growing number of individuals who are stepping off the single-track path of domestic education and employment in Japan from the beginning and are building their career paths with a focus on overseas. These are individuals who study abroad from their student days and consider their career paths from perspectives outside Japan, not through easy means like working holidays. Of course, studying abroad from a young age comes with significant financial barriers, but if it yields greater returns, such movements will accelerate. In the sports world, players like Shohei Ohtani in Major League Baseball and Rui Hachimura in the NBA are excelling on the global stage in ways previously unimaginable. Similarly, in the world of academia and business, we may see more Japanese individuals making significant impacts worldwide. What will be evaluated here is not as a member of a country or an organization, but as an individual Japanese person.
If this diaspora movement among young people intensifies, even if Japan’s growth as a nation declines, there will still be recognition for the “excellent Japanese” on an individual level. I believe that the movement of a certain percentage of young people leaving Japan is unstoppable. However, this could mark the beginning of a movement where, for the first time in modern history, Japanese individuals are evaluated not as part of a group or organization, but as individuals. As a historical trend, I believe this movement is something that should not be avoided.